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イクメンが集うBARで聞いた!パパサークルの魅力とは(後編)

掲載日: 2016年8月12日更新日: 2017年5月16日西條一法

「いこーよ」編集部のスタッフが、「イクメンたちが集まるBAR」に集まったパパたちに、パパ友やパパサークルの魅力を聞くこの企画。後編では「ワーク・ライフ・シナジー」の伝道師と、兼業主夫放送作家にお話を聞きました。

「前編」はこちら

仕事と生活で得たことが「寄せ鍋」的な相乗効果を生む

月に1度、イクメンたちが集まるイベント「イクメンCero」を行っているバー「旗の台BAL Cero」でイクメンたちにお話を聞くこの企画。前編ではパパサークルの代表を務める五十嵐丈敏さん、親父の会「いなちち」の代表である橋謙太さんにお話を伺いました。

尾形和昭さん

3人目は尾形和昭さんNPO法人ファザーリング・ジャパンの「イクボスプロジェクト」に参画、ほかにも「IT部会 リーダー」、小学校のPTA副会長などを務めている方です。名刺に「ワーク・ライフ・シナジーの伝道師」と書いてあるのがものすごく気になりますね。

「『ワークライフ・バランス』を『ワーク・ライフ・シナジー』と呼ぶようにしたのは、別に仕事と私生活のバランスをとっているんじゃなくて、それぞれのいい『ダシ』をそれぞれが共有して生かしていくものだと考えているからです。」

「つまりシナジー(相乗効果)なんですね。別の言い方をすると「寄せ鍋」。仕事と私生活がそれぞれ味を出して、さらに鍋全体が美味しくなる。それが『ワーク・ライフ・シナジー』なんです。」

「この『ワーク・ライフ・シナジー』という言葉、じつは『イクボスプロジェクト』にも関係があるんです。このプロジェクトは、管理職側に焦点を当てていて、管理職が育児をしている男性と女性のことを理解(1)して、自分でもワークライフ・バランスを保って(2)、かつ業績もあげていく(3)。この3つの要素が集まっているのがイクボスです。」

この3つを同時に成り立たせるのはかなり難しそうですね。具体的にはどんなことになるのでしょうか?

「例えば会社の会議なら、ある程度目的や方向性をしぼって議題を進められますが、PTAは同じ地域に住んでいる人たちの集まりで、方向性だけ提示したところでうまくいかないんですよね。」

「逆に言えば、PTAでの話し合いをうまくまとめることができるようになれば、会社ではもっと効率的に内容の深いことができ、通常より短い時間で成果を出せるから、業績向上に役立てることができる。こういうイメージですね」

なるほど。仕事と私生活、どちらにウエイトを置くのかではなく、仕事での経験と私生活の経験が互いに好影響を与えあう状態のことなんですね。確かにそれなら「バランス」ではなく「シナジー」と呼ぶほうがふさわしいですね。

イクボスプロジェクトは2014年に立ち上がったもので、2016年3月にはイクボスが、内閣府の「少子化社会対策大綱の策定に向けた提言(案)」にも取り上げられ、今後どんどん世の中に出てくる言葉になってきそうです。

パパ友を作るには「一歩を踏み出すことが大事」

この記事を読んでいる読者がパパ友を作るには、どうしたらいいでしょうか?

「今では、各自治体が『パパスクール』のようなお父さんが勉強できるような、育児に関する講座を実施しているところも多いです。私も港区での助成事業を活用し、パパスクールを開催したりしています。少し探せば出てくると思いますので、ぜひ見つけて参加してみてください。」

「また、SNSで発信している人も多いので、行く前にその人や団体のことを調べておくのもいいですよね。」

とりあえず周囲にアンテナを伸ばしてみる、という感じでしょうか。

まず一歩を踏み出すことがすごく大事なんです。私も『育児にどうやって関わったらいいんだろうか』って思った時期があったので。えいっと飛び込むといろんな情報が入ってくるから、そこの壁をどうやって取り払うかですね。」

また、実際に参加される方の中には、お父さんが探してくるよりも、お母さんがイベントを探してきて「行ってきなよー」と言ってくれたところが多いそうです。腰が重いパパの最後のひと押しは、愛する妻からのひとことなのかもしれません。

次はいよいよ、バーのマスターであえる杉山ジョージさんにお話をうかがいます。


パパ友を作るコツは「1回力づくでやってみること」

杉山ジョージさん

最後に、このバーのマスターをやっている杉山ジョージさんにお話を伺いましょう。杉山さんは兼業主夫兼放送作家で、世に「イクメン」という言葉を生み出したNPO法人「イクメンクラブ」に所属しているほか、NPO法人「ファザーリング・ジャパン」や「日本パパ料理協会」「秘密結社 主夫の友」にも参加しています。

まずは「イクメンが集まる」イベントを企画した理由を教えてください。

「これまで自分が苦しいときに、パパ友に救ってもらったことがあって。それで、パパならではの苦しさや悩みを共有できる人と出会う場って、なかなかないと感じていたんです。」

「悩みを相談する場所というわけでもなくて、こうしてパパたちと話すことで、結果的には自分が『楽しいな』と思ったり、『あ、自分がやっていることってこうなんだ』って思える場所ができたらいいなと。そんなことを考えたのがきっかけですね。」

そんな杉山さんには今ではたくさんのパパ友がいますが、パパ友を作るにはどうしたらいいですか?

「1回『力づく』ですよ(笑)。思っているだけだと始まらないから、失敗をしてもいいけど、1回力づくで仲良くなれる人を作れるかどうかです。1回やった経験があると、その人がダメでも、結果的には次につながる。その成功体験が大きいと思うんです。」

ということは、杉山さんも最初のパパ友は「力づく」で?

「そうですね。最初のパパ友は、娘の保育園で同じクラスの保護者たちに『お祭りがあるから、そのあとに飲みに行かない?』って誘ったんだよね。」

力づくですねえ(笑)。

「人によっては、飲みにいくお誘い自体だって『アウト』かもしれないけど、そのときの僕は28歳で保護者たちなかでも若かったから。『若さと勢いでとにかくやってみよう』って(笑)。」

「結局、クラスの8割くらいが参加することになったんですよね。祭りで子どもたちと遊んだあと、17時に居酒屋に集合。それぞれの都合のいい時間で帰ってもらう形にしていたけど、最後までは朝の4時まで数人が残った(笑)。」

そこまで飲めれば仲良くなれますよね(笑)。ところで、そうまでしてパパ友を作ろうと思った理由は?

保育園に通っているところって、共働きなのでどの家も確実に大変ですよね。うちは嫁さんの実家が近いから助けてもらえていたけど、そうでないところは絶対あるだろう、と。そのときに『じゃあ同じクラスの保護者たちが仲良くなったら、お互いが大変なときに助け合えるんじゃない?』と思ったのがきっかけ。」

「自分自身が自営業だし、子どもを見るのも嫌いじゃないから『いつ見てもいいよ』というスタンスもあったし。で、そういうことをやるときにモメないようにするには、仲良くなることが一番なんですよね。どれだけ相手の心に踏み込めるかが勝負だと思ったんです。」

こうして企画した保育園の飲み会では、杉山さんがお酒の勢いも借りつつ「敬語は禁止」「ファーストネームで呼び合う」など、年齢などの垣根を取り払ったそうです。その後の杉山さんは「ただ言うだけで終わっちゃうのはカッコ悪い」と保育園のPTA会長を担当したり、連絡網を自分で回したりと「表の役割」もしっかり担当しています。それが信用されることにもつながっていったんですね。

30年後くらいにガッツポーズをしたいだけ

これからパパサークルの活動を通して、どんなことを成し得たいと考えていますか?

「僕らが思っているのは、壮大な野望ではなくて、地元のイベントやっている人間からすると、ほんとにもっとくだらない理由なんですよ。今、僕らは小学校で花火大会をやっているんです。これが娘が子どもを産むまで残ったとして、うちの娘が自分の子どもに『この花火大会を作ったの、私のパパだよ』って言ったときに、たぶん30年後ぐらいなんですけど、ガッツポーズをしたいだけなんですよ。」

「そんなことを考えてたんですか(笑)。オレは今があればいいんだけど」とは、前編にも登場した橋さん

「あくまで自分的な一時的な喜びは当然あるよね。でも、今ここで自分がうれしいことばかりじゃなかったとしても、最終的に娘がそれを誇りに思ってくれたらということであれば、今やるべきでしょう。」と杉山さん。

橋さんもそれに賛同しつつ「あとね、子どもに活動をやってほしい。私は子どもが20歳くらいになったら、むしろ1回地域から離れて行ってほしいと思っている。でも、親になったときにちゃんと『親がこんなことやっていたな』っていうのを思い出してほしい。それが結局プラスになるから。先々ホームを作ることがすごく大事だよね。全部自分に返ってくる。会社なんて保証ないもん(笑)。」

「それはすごく大きいかもしれない。楽しくてしょうがないですよね」そう答えて杉山さんが、手にしたジョッキをぐいっとあおりました。

バーの中ではまだまだ話は尽きないですが、終電の時間が近づいてきたので、今宵はここまで。みなさんパパ友を作ったり、パパサークルの活動をとおして「新しい楽しさ」を発見して、生き生きとしている姿が印象的。「自分の人生観がほんの少し変わった」話を聞けた気分になった一夜でした。

お話を聞いたのは…

  • 杉山ジョージ

    兼業主夫放送作家。1976年千葉県市川市生まれ・日本大学芸術学部放送学科卒。中1と年中、二人の娘を子育て中。2009年に長女が年長の頃から家庭に軸足をおく兼業主夫放送作家となり、情報番組だけでなく子育て番組の構成や子育て関連サイトのコラムなどを執筆。NPO法人ファザーリングジャパン、日本パパ料理協会、秘密結社 主夫の友、NPO法人イクメンクラブ、品川区立清水台小学校PTA顧問(元会長)所属。旗の台BAL「Cero」を経営。

  • 杉山錠士(Facebook)
  • 旗の台BAL Cero(Facebook)
  • 尾形 和昭(NPO法人 ファザーリング・ジャパン IT部会 リーダー)

    1972年1月生、広島県三原市出身。2児の父親(7歳娘/5歳息子)。ワーカーホリックであったが、パートナーの第二子妊娠により『男性が育児参画していくことが必要である』ことを実感。第二子誕生後、2011年9月末〜10月上旬に「なんちゃって育休」を取得(会社制度などを最大限利用し、土日祝を含む12日間取得)。それ以来、働き方・生き方・考え方を変え、現在「ワーク・ライフ・シナジー」を標榜し、悩みつつパートナーと共に子育て奮闘中。

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  • 橋 謙太(稲城 父親の会「いなちち」代表)

    発達障害の子ども、家族を支援する「ファザーリングジャパン・メインマンプロジェクト」の発起人&代表。稲城父親の会「いなちち」代表。保育園や学童の保護者会会長を歴任してきた。周囲には自営業のお父さんと思われているが、じつはサラリーマン。

  • いなちち「稲城 父親の会」( Facebook)
  • 熱血組!(Facebook)

ライター紹介

西條一法

39歳のときに子どもが生まれて育児の楽しさを知り、40歳にして某ゲーム雑誌から「いこーよ」編集部に電撃移籍した。「きかんしゃトーマス」で感動して泣く41歳。最近のマイブームは、子どもに絵本を読むことと、体力が続く限り一緒に遊ぶこと。お風呂と寝かしつけも担当しているが、最近は息子より先に自分が寝てしまう。

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