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ひな祭りにはなぜ「ちらし寿司」を食べるの?

掲載日: 2016年2月26日更新日: 2017年5月16日飯田友美

なぜひな祭りに「ちらし寿司」や「ひなあられ」を食べるようになったのか、不思議に思ったことはありませんか? ひな祭りと食べ物の関係について、日本文化にまつわる書籍を多数執筆されている日本の文化・歳時記研究家、広田千悦子さんに伺いました。

山や海から自然の力をわけてもらう「ちらし寿司」

色とりどりの具材を使い、ひな祭りの食卓を華やかに飾る「ちらし寿司」。なぜひな祭りにはちらし寿司を食べるようになったのでしょう。

「古い時代には、花が咲く時期に海や山へ行って食事をするという風習がありました。山のものも海のものもまとめて、自然の恵みに感謝して食べることで、自然の力を身体に取り入れていたようです。ちらし寿司はそのなごりなのかもしれませんね。」

ちらし寿司の由来には諸説あり、江戸時代に一汁一菜が命じられたときに、食材をご飯に混ぜることで、いろいろな食材を食べられるように考えられたという説もあるそうです。

その後、女の子の成長を祝う行事としてひな祭りが広がるにつれ、華やかで縁起のいい具材を多く使うちらし寿司がお祝いの席には欠かせないものとなったようです。


ちらし寿司の具材に込められた意味とは?

古くから伝わる行事では、縁起のいい食べ物を行事食として食べる習慣が多く見られます。広田さんによると、お正月に食べるおせちと同様に、ちらし寿司に使われる具材にもいろいろな意味があるとのことです。その一部をご紹介します。

  • 海老:赤い色が魔よけとなる。腰が曲がった姿が長寿を連想させ、縁起がよい
  • れんこん:穴が開いているので、先の見通しがよくなる
  • :まめまめしく、健康でいられるように。まめに働けるように

これらの縁起のよい食材と共に、色が桃の花に似ている「でんぶ」や、季節感を意識して「菜の花」を飾ったりもします。

全国のちらし寿司いろいろ

ちらし寿司の具には、特にこの具を使わないといけないという決まりはないので、お好みに合わせてアレンジOK! 地域によってさまざまなちらし寿司があるそうですよ。

「岡山のばら寿司は、さわらのなますが入っていますし、徳島ではひじきや山菜、金時豆を入れたりするようです。広島ではアナゴや黒豆、にんじんなど10種類くらいの具を入れたもぐり寿司、静岡では魚とわさび、お茶の葉などで作るそうです。そのほか、お刺身を乗せる五目ちらしや、あさり飯を食べるところもありますね。」

その土地に伝わるちらし寿司には、たくさんの種類がありそうですね! 気に入ったものをご家庭に取り入れて、お子さんと一緒に華やかで楽しいちらし寿司を考えてみてはいかがでしょうか。


「はまぐりのお吸い物」は磯遊びのなごり?

ひな祭りといえば「はまぐりのお吸い物」も代表的な料理。一般的に、はまぐりの貝殻は、対になっているものだけがぴたりと合うことから、「相性のよい人と結ばれますように」との良縁の願いが込められていると言われていますが、「はまぐりを使うのは、ひな祭りの時期に磯遊びをしていた頃のなごり」だと広田さん。

「ひな祭りにあたる3月3日は、旧暦だと4月9日頃になります。この時期は干満の差が大きく、磯遊びに適した時期なのですが、季節の変わり目であるこの頃、水のそばで遊ぶことで災いや邪気をはらうという習慣がありました。ひな祭りにはまぐりのお吸い物を食べるのは、磯遊びの最中に貝を拾い、それを神様にお供えしていたときのなごりだと考えるとしっくりきますよね。」

小石(ぐり)のようによく取れる、縁起のよい栗のような形をしている、などがはまぐりの名前の由来なのだそうですよ。また、万葉の時代から貝や小石を身につけるならわしはあったそうで、海の遠く彼方から流れ着く貝や小石には霊力があり聖なるものだと考えられていたようです。


菱餅やひなあられの色にも意味がある

菱餅もひな祭りには欠かせない食べ物のひとつ。それではなぜ、ひな祭りに菱餅を飾るのでしょうか?

古くから日本では、災いをよけ命が無事であるようにとの願いを込めて、お祝いの時にはお餅を食べる習慣があります。昔はひな祭りに春の七草であるごぎょう(母子草)のお餅を食べていました。白いお餅と草餅だったものが、色のついたお餅に変化していったようです。お餅が菱形をしている意味は、植物の『菱』の種が硬くて鋭いので魔よけになるという説や、菱形は矢じりのような形をしていて鋭いので魔よけになるという説などさまざまです。」

健康を願って食べていたお餅が、女の子のお祝いにふさわしく、きれいな色のお餅となって受け継がれてきたんですね。

そして実は菱餅の一段一段の色にも意味があるそうです。

「一般的に言われているのは、白は雪、緑は芽吹き、赤は桃の花を表しているという説ですね。また、白は清祥、緑は健康、赤は魔よけといった意味合いもあります。地域によってさまざまで、5段の菱餅を飾るところもあります。」

もうひとつ、代表的な食べもの「ひなあられ」。このひなあられも菱餅と同じ色をしていて、込められた意味は同じです。外で菱餅をいただくことができるように砕いてひなあられにした、もち米をあぶって神様にお供えした、などの由来があるそうです。

何気なくひな祭りに食べていたものにも、それぞれに由来や意味があり、願いが込められていたのですね。お雛様を飾って、美味しいお料理を食べて、女の子の成長を祝う、そんなステキなひな祭り。今年はお子さんと一緒に、食べものの由来や意味についてのお話をしてみてはいかがでしょうか。

お話を聞いたのは…

  • 広田千悦子さん

    文筆家。日本の文化・歳時記研究家。うつわ・ことば・絵の作家。新聞や雑誌などでコラムと挿絵を連載中。企業アドバイザー。メディアなどに多数出演。著書は『くらしを楽しむ七十二候』(アースエンターテイメント)、『ほんとうの和の話』(文藝春秋社)、『口福だより』(小学館)、『美味しい! 日本のくらしと七十二候』(新潮社)、『七十二候で楽しむ日本の暮らし:角川ソフィア文庫』(角川学芸出版)など多数。『おうちで楽しむにほんの行事』(技術評論社)はロングセラー。

  • 広田千悦子さんのホームページ
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ライター紹介

飯田友美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、フリーランスのライターに。好きなものは猫とパンダ、趣味はライブに行くこと、お芝居を観ること。杉並区在住。2児の母。

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