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子供との2人乗り自転車 よくある事故&安全に乗るための注意点

掲載日: 2016年12月20日更新日: 2019年5月24日菊地貴広

保育園や幼稚園の送り迎えに便利な自転車は、日々の足として利用しているママパパも多いのではないでしょうか。しかし、2人乗り自転車には常に危険がつきまといます。足を車輪にはさんでしまう「スポーク外傷」や転倒など、よくある事故とその対策を「子どものための危険学」のリーダー・原秀夫さんに伺いました。

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車輪に足を巻き込まれる「スポーク外傷」は6歳以下に多い

最初にお話を聞いたのは、「スポーク外傷」について。後部座席に乗った子供の足が車輪に巻き込まれてしまうケースです。消費者庁と国民生活センターの共同事業「医療機関ネットワーク」の調査によれば、過去5年間で172件のスポーク外傷が発生し、その半数以上は6歳未満の子供だったそうです

※参考データ「自転車に乗せた子どもの足が車輪に巻き込まれる事故に注意」

「事故に気づいて急ブレーキをかけても、停車するまでに3〜4mくらいは進んでしまいます。その間に、何十本ものスポークが子供の足、多くの場合はかかとの肉を削り続けることになります。ある幼稚園の先生の話では、この事故で足の骨が見えるようなケガをしてしまった子も実際にいるそうです」

スポーク外傷は、チェーンを覆うカバーが付いていない左側で起きることが多いそうです。なぜ子供は車輪に足を入れてしまうのでしょうか? その理由は子供の「好奇心」にあると原さんは言います。

「子供は、扇風機に指や細い棒などを入れてみたがりますよね? それと同じで、クルクル回る車輪を見ると、どうしても足を入れてみたくなってしまうのです。また、足をブラブラさせるのも子供は大好き。どれだけ言い聞かせても、その気持ちは抑えようがありません。大人が事故を防止する以外に手はないのです

では、具体的にどのような防止策をとればいいのでしょうか?

必ずチャイルドシートに座らせること。そして、足元にドレスガード(フットガード)を取り付けることです。ガードは足置きの位置が子供に合うように調整してください。少しの距離だからと直接荷台に座らせるのは本当に危険ですので、絶対にやめてください

チャイルドシートやガードは、常に点検することも大切です。少しでも破損していたら、すぐに交換や買い直しをしましょう。そのまま使い続ければ、事故の原因になってしまいます。

また、子供は成長によって足の長さが大きく変化し、足の届く距離も変わります。成長に応じて背もたれや足乗せの高さを調節してください。


子供の頭に1,300キロの衝撃が加わる「最悪のシナリオ」とは

スポーク外傷以上に重大な事故につながりかねないのが、「転倒事故」。最も事故の可能性が高いのは、じつは自転車を停めているときだといいます。

「これも幼稚園の先生から聞いた話ですが、送り迎えで自転車を停めているときに転倒事故が起こりやすいそうです。子供をチャイルドシートに乗せたまま、立ち話に夢中になって手を離してしまったり、あるいは子供を残して忘れ物を取りに戻ったりしたときなどが危険です」

「子供はじっとなどしていません。『身を乗り出したい』『下をのぞきたい』『ひとりで降りてみたい』という気持ちでいっぱいです。友だちを見つけてうれしくなってしまうこともあります。その結果、バランスを崩して自転車ごと転倒してしまうのです」

自転車の後部座席は、子供にとっては重大事故につながりかねない高さです。もし転倒した場所に縁石などの硬いものがあったとしたら……。

子供を乗せた自転車から手を離さないこと・その場を離れないことが大前提

「私たちは、『チャイルドシートに乗った子供が自転車ごと転倒し、縁石に頭をぶつけてしまう』という最悪のケースを想定し、人形を使った実験を行ないました。その結果、子供の頭に1,300キロもの力が加わっていることがわかったのです。これは、ヘルメットをしていても100%死んでしまう恐ろしい結果です」

死亡率100%…。たとえ最悪の事態を想定した実験だとしても、非常にショッキングな話です。その防止策についても伺いました。

子供を乗せた自転車から手を離さないこと、その場を離れないこと。これは絶対に守ってください。そのうえで車高の低い自転車や、スタンドがしっかりしている自転車に買い替えることを検討してみてもいいですね」

「また、地面に打ちつけられた場合、多くは肩を打ったあとに頭を打ちます。そのときに有効なのが、ヘルメットの着用です。子供の頭にサイズが合っていないと効果が減ってしまうので、購入する際にきちんと確認してください。わからなければ、迷わずお店のスタッフに相談しましょう」

まず大原則として、転倒を防ぐための行動をママパパがとること。そのうえで、転倒しにくい自転車を選び、転倒してしまった場合の衝撃を少しでもやわらげる方法を選ぶことが大切だと原さんは教えてくれました。


赤ちゃんのパパママに知ってほしい「おんぶ自転車」の危険性

もちろん、走行中にも常に転倒の危険がともないます。2人乗りは重心の位置が変わって不安定になりますし、子供が動いたときには、その危険がさらに高まります。最近、とくに危険性を指摘されているのが、まだ小さい赤ちゃんを背負って乗る「おんぶ自転車」です。

「『NPO法人・Safe Kids Japan』が『おんぶ自転車』の転倒事故を実験したところ、生後6カ月の子どもが骨折するとされる基準値の7〜17倍もの衝撃が頭に加わっていたそうです。また、体の小さい赤ちゃんは、肩から落ちずに、そのまま頭を地面に打ちつけてしまうこともわかったそうです」

※参考データ「赤ちゃんおんぶして自転車はNG? 転倒「死亡事故」きっかけに論議起きる」

2016年5月には、「おんぶ自転車」で車と接触し、転倒により7カ月の子どもが亡くなってしまう痛ましい事故が起きてしまいました。まだヘルメットを着用できず、転倒の際に手をついて自分を守ることができない赤ちゃんは、自転車に乗せないほうがいいということが、実験ビデオを見るとよくわかります。

自転車が安全かどうかと、自分の乗り方の点検を

育児や仕事に追われて毎日あわただしいママパパたち。保育園や幼稚園までの距離が遠かったりした場合には、「自転車は必需品」いう人も多いでしょう。けれど自転車には我々が考えているよりも、はるかに大きな危険がひそんでいます。

「親や子供自身がとっさに事故を避ける行動をとるため、実際には大事故にならないケースがほとんどでしょう。けれどそれは、『幸運が重なっただけ』なのです」

ぜひ一度自分の自転車を点検し、危険な乗り方をしていないか振り返ってみてください。ヒヤッとした経験があるママパパも多いのではないでしょうか。そのことに自分で気づき、事故を避けるための行動や工夫をしていくことが大切です。

また、自転車を乗る際の危険については、原さんが手掛けている「子どものための危険学」や「危険学プロジェクト」でも動画で解説しているので、ぜひご覧ください。

「子どものための危険学」「危険学プロジェクト」(「自転車の危険」ビデオ 約11分)

★この記事のポイント★

  1. 車輪に足を巻き込まれる「スポーク外傷」は6歳以下に多い
  2. スポーク外傷の理由は、子供の「好奇心」にある
  3. 事故を防ぐにはまずチャイルドシートに座らせること
  4. そのうえで足元にドレスガード(フットガード)を取り付けることが必要
  5. 送り迎えで自転車を停めているときに転倒事故が起こりやすい
  6. 子供を乗せた自転車から手を離さない。その場を離れない
  7. 小さい赤ちゃんを背負って乗る「おんぶ自転車」も危険
  8. 一度自分の自転車を点検し、乗り方も見直しを

お話を聞いたのは…

  • 原秀夫さん

    2007 年4 月に発足した「危険学プロジェクト」のうち、「子どものための危険学」を扱う「グループ8」のリーダーを務める。子どもの痛ましい事故を防ぐために、幼稚園の先生の協力を得て、子どもの事故防止に関する絵本、CD、冊子などを作成し、ホームページで公開。そのほかにも、保育雑誌の監修や、「子どもの事故防止」と「子どものための防災」をテーマとする講演など、活動は多岐に渡る。小学校1年生向けにさまざまな小学校を訪れ、「土曜授業」と名付けられた「危険の体感と発見の授業」も開催している。

  • 子どものための危険学
  • 危険学プロジェクト

ライター紹介

菊地貴広

編集プロダクション・しろくま事務所(http://whitebear74.jimdo.com)代表。2014年に出版社から独立し、ファッション、グルメ、ビール、猫、タレント本など幅広く活動。2015年11月に男子が誕生し、息子に夢中。その成長を見るたびにフルフルと感涙する日々。

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